お知らせNEWS
2025.07.18 京都は暑い☀️ 熱中症はこうして防ごう!正しい知識とその理解。
スイカ、花火、甲子園——日本の夏を彩る風物詩はいろいろありますが、医療者にとっての夏は「熱中症との闘いの季節」です。
2024年、京都府では5月から9月の間に2,383人(昨年+183人)が熱中症で救急搬送され、そのうち65歳の高齢者が62%を占めています。これは決して他人事ではありません。
しかし、熱中症は「予防できる病気」です。
体の仕組みを正しく知り、環境に合わせた対応をとることで、重症化や発症自体を防ぐことが可能です。
この記事では、
-
なぜ体温が上がるのか?
-
熱中症と発熱の違いは?
-
具体的な予防策は何か?
について、医師の立場からわかりやすく解説したいとおもいます。

体温はどうやって調節されている?〜熱の発生と冷却のバランス
人間の深部体温は約37℃。これは体の酵素や臓器が最もよく働く温度帯なのです。
この体温を保つために、私たちの体は以下の4つの要素で調整しています。
-
外的環境(気温・湿度・風など)
-
血液量(血流を通じた熱の運搬)
-
心機能(心臓がポンプの役割を果たす)
-
筋肉運動(熱の産生源)

筋肉で生まれた熱が心臓のポンプによって血流にのって体表に運ばれ、外気によって冷却されて戻ってくる——普段はうまくバランスがとているこのサイクルが崩れると、体温の上昇が制御できなくなってしまうのです。
各要素が崩れると何が起きるのか

発熱と熱中症(高体温)の違い|制御不能な体温上昇が危険
「熱が出た」と聞くと風邪などの感染症を連想しますが、発熱と熱中症による高体温はまったくの別物です。
-
発熱は、ウイルスなどに対抗するため脳と体が“意図的に”体温を上げている状態
-
一方、熱中症は体温が上がっても冷却できず“制御不能”になっている状態
つまり熱中症では、休んでいても体温が下がりにくく、命に関わる場合もあるのです。

熱中症を防ぐ4つの視点|環境・血流・心機能・筋肉運動
では、どのような予防策を講じればよいのでしょうか?
前述した「4つの体温調節要素」ごとに対策を紹介します。
① 外的環境:暑さ指数(WBGT)と室温管理
暑さ指数(WBGT)を確認しよう
「暑さ指数(WBGT)」は、気温・湿度・日射・風の有無などを総合的に評価する国際的指標で、熱中症発生リスクと高い相関があります。
-
環境省の熱中症予防情報サイトでは、日本全国のWBGT値をリアルタイムで確認できます。
外出やスポーツ、作業の前にはチェックを習慣にしましょう。
冷房は「設定温度」ではなく「実際の室温」を28℃以下に
-
「エアコンの設定温度=28℃」では不十分
-
実際の室温が28℃以下になるよう温度計で確認しましょう
-
扇風機やサーキュレーターで空気を循環させると冷房効率UP
-
急激な温度差は体に負担がかかるので、冷やしすぎも注意!
② 血液量:水分補給は“塩分”と“吸収効率”がカギ
経口補水液(OS-1など)が最適 (糖尿病患者さんは注意!)
大量の汗をかいたとき、水分と一緒にナトリウムなどの電解質も失われます。
その補給には**経口補水液(ORS)**が有効です。
-
OS-1などのORSは、塩分と糖分のバランスが医学的に最適
-
通常の水やお茶だけでは低ナトリウム血症のリスクも
スポーツドリンクは状況により注意
-
糖分が多く、糖尿病の方は要注意
-
長時間の運動時には使用可
-
基本は経口補水液を優先しましょう
③ 心機能:心疾患がある人は重症化しやすい
心不全、狭心症、不整脈などを持つ方は、血流による熱の運搬がうまくいかず、重症化しやすい傾向があります。
また、高血圧で血圧降下役を飲んでいる方は脱水に伴う低血圧が増悪する可能性もあり注意が必要です。
-
暑さ指数を確認して行動判断を
-
屋外作業や外出はできる限り避ける
-
冷房使用も積極的に
-
かかりつけ医と予防策を相談しておきましょう
④ やめる・やめさせる勇気を
-
小児や高齢者の運動・活動はWBGTをもとに中止・延期を判断
-
指導者・管理者には**「活動を止める判断」**が求められます
-
労働現場では作業服や作業内容に応じた対策を
-
高齢者は基礎疾患が多いため、体調管理も重要です
厚労省の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」も参考になります。

【まとめ】命を守る熱中症予防のポイント
以下の点を押さえるだけで、多くの熱中症リスクは予防できます:
✅ 暑さ指数をチェックし、室温は実測で28℃以下
✅ 通気性の良い服装と環境を整える
✅ 水分補給は経口補水液(OS-1など)を中心に
✅ 心疾患がある方は無理をせず事前に相談を
✅ スポーツや労働はやめる判断も重要
最後に|「日本の夏」を安心して楽しむために
熱中症は、誰にでも起こりうる予防可能な病気です。
気温・湿度の高い夏を安全に乗り切るために、
正しい知識と行動で、自分や大切な人の健康を守りましょう。
花火大会、夏祭り、家族旅行——楽しい夏の思い出をつくるためにも、
熱中症予防を日常の習慣に。

