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2024.10.07 もはや国民病?慢性腎臓病(CKD 2)
国民病としての慢性腎臓病(CKD)
前回(腎臓の数字が悪い 〜「腎機能」とは(CKD 1))では、そもそも腎機能とはどういうものかを簡単にご紹介しました。
今回は腎機能が持続的に低下する状態、「慢性腎臓病(CKD)」とはどういうことなのかをご紹介したいと思います。
「健診や人間ドックなどで腎機能低下を指摘されたがよくわからない」という相談をされる患者さんが増えています。
慢性に進行する腎機能低下の病態を慢性腎臓病(CKD: Chronic kidney disease)と呼びます。まだ聞き慣れない病名かもしれませんが、我が国のCKD患者は1480万人以上いるとされており、実に20歳以上の7人に1人(約14%)がCKDということになります(2024年現在)。
慢性腎臓病(CKD)とは 〜クレアチニンとeGFR
慢性腎臓病(CKD)とは、原因にかかわらず慢性に腎機能低下が進行する状態をいいます。腎機能の指標には様々なものがありまずが、健診や一般的な内科診療では血中のクレアチニン濃度(mg/dL)、及びクレアチニン濃度から計算された推算糸球体濾過量(eGFR)を用います。eGFRは一分間に腎臓がどれだけの血液を処理(ろ過)しているかを現します。
クレアチニンは肝臓で合成されたクレアチンが、筋肉運動に必要なエネルギーの供給源として利用されたあとに残るゴミです(図)。腎臓はクレアチニンの排泄処理を担っているので、血中のクレアチニン濃度(処理されていないゴミ)は腎機能を知る指標として利用されます。
各人の筋肉量や検査前の筋肉運動によって血中のクレアチニン濃度は影響されるので、検査結果の解釈に注意が必要です。突然クレアチニンが上昇した健康な方の話を聞くと前日に乗馬をしていた、ということもありました。この例では腎機能の悪化によってクレアチニンが上昇したわけではないので全く症状はでませんし、数日後の採血で正常値に戻っていました。
(参考:腎機能悪化による症状)
CKDのステージ分け(リスク分類)〜早期発見が重要
血中のクレアチニン濃度をもとに計算されたeGFRでCKDはステージ分けされています。CKDステージ1からステージ5までの6段階に分かれていますが、概ね100点満点評価のテストとするとイメージがつきやすいのではないかと思います。eGFRが持続的(3ヶ月以上)に60を下まわるとCKDと判断します。
CKD診療では、このステージ分けに尿蛋白量を加味して死亡、末期腎不全、心血管死亡の発生リスクを評価します。
末期腎不全にいたり透析や腎臓移植が必要となる患者さんが増加しており、CKDはそのリスクとなります。さらに、CKDは脳梗塞や脳出血といった脳卒中や、心筋梗塞の原因となることもわかってきました。そのため、腎臓の機能低下を抑えるための治療を行うと同時に、心血管疾患発症を予防するための早期治療介入を行うことが重要です。
具体的なCKDの治療は原疾患により異なるので、医療機関を受信して適切な評価を受けましょう。
注意すべきこと
腎機能の悪化は基本的には不可逆な経過をたどります。つまり、残念ながらステージの進行したCKDが「治る」ことは期待しづらいということでもあります(2024年現在)。しかも腎機能低下が進行しないとはっきりとした症状は現れません。また、腎臓は様々な役割をこなしているため、症状があっても、それが腎機能低下のせいであることに気づきにくいということもあります。気がついたときには透析を始めるしかない、という患者さんをたくさん見てきました。
検診/健診で腎機能の異常を指摘された場合はまず医療機関を受診しましょう。腎機能の現状評価と腎機能低下の原因検索をすることで早期介入の足がかりを作ることができます。CKDの原因は糖尿病や高血圧といった生活習慣病であることが多く、これらの基礎疾患の管理がまず重要になります。他にはIgA腎症などの糸球体腎炎、膠原病やさまざまな自己免疫異常が原因であることもあります。内服薬やサプリメントによる腎機能悪化も注意が必要です。
腎臓は体のバランスを維持するためにさまざまな仕事をこなしています(腎臓の数字が悪い 〜「腎機能」とは(CKD 1))。このバランスは腎臓による非常に繊細な管理の上になりたっています。そのため、体によいとされている食品やサプリメント、その他の健康習慣もCKDでは逆効果、ということもあるので注意が必要です。また、腎機能を改善するようなサプリメントや健康食品の広告が散見されますが、臨床医学的にはそういったものの効果は一切認められていません。
気になるときはまず、かかりつけ医に相談しましょう。
まとめ
・ 慢性腎臓病(CKD)は日本人成人の約14%に及んでおり、もはや国民病といえる。
・ CKDはeGFR(クレアチニン)、尿蛋白によりステージ分け、リスク分類がされている。
・ 進行した腎機能は回復が困難であり、早期の発見、介入が必要である。
・ 具体的な治療は原因疾患により異なるので、医療機関での評価が必要。
・ 薬やサプリメント、食事療法など、健康に良いとされているものがCKD患者では逆効果である可能性がある。