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高血圧治療 〜目標とできること (高血圧②)

「血圧が高い」 〜「高血圧治療ガイドライン」による管理目標

 

クリニックには、「健診で血圧が高いといわれた」「家族の血圧計で測ってみたら高かった」など、色々なきっかけで血圧が「高い」ことを指摘されて来院される患者さんがたくさんおられます。

 

 

この血圧の「高さ」の基準はどのように決められているのでしょうか。高血圧治療ガイドラインでは表1のように血圧値を分類しています。

 

高血圧管理の目標はゲームのようにこの数値を扱うことではなく、あくまでも脳心血管病(脳梗塞や心筋梗塞など)による死亡や生活の室の低下を防ぐことです。血圧値の分類を基に、患者さんそれぞれのリスク因子を加味して降圧の目標値が定められています(表2)。リスク因子には年齢、性別、喫煙やほかの生活習慣病、脳心血管病の既往・併存があげられています。

2019年のガイドラインの降圧目標値は2014年と比較して引き下げられており、これは降圧目標が低いほうが動脈硬化の進行による合併症予防ができたという調査結果が得られたためです。

この血圧治療の目標値ですが、実際には達成率がかなり低いことがわかっています。要因としては医師側が血圧の管理目標を把握していないことや、患者さん側が内服薬の増量をいやがる(特に錠数が増えること)ことなどが挙げられています。

 

血圧を下げるためには 〜まずは薬に頼らずに

 

では、実際に高血圧と診断されてなにか始めなければならないとなったとき、どうすればよいのでしょうか。ガイドラインを参照すると、まずは生活習慣への介入が謳われていることがわかります(図1)。

「生活習慣病」なので当然といえば当然なのですが、まずは生活習慣への介入を行います。薬物療法が始まっても、修正された生活習慣の持続と必要であれば生活習慣是正の強化が必要になることもあります。要するに「薬に頼らずに」血圧を下げるということなのですが、重要なのは「食塩制限・禁煙・節酒」です。喫煙は直接的に血圧上昇に働くほかにそれだけで動脈硬化を促進する要因となりますし、癌や肺疾患、歯周病、妊娠出産への影響もあります。「禁酒」ではなく「節酒」としているのは、適量は問題ないとされているためです、しかし、過度の飲酒は血圧上昇だけでなく、脳卒中やアルコール性心筋症、心房細動、睡眠時無呼吸症候群、癌の原因にもなり死亡率を高めます。高血圧の管理においては、エタノール換算で男性20-30ml(日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯)、女性はその半分程度までの飲酒量が勧められています。

 

食塩制限 〜これが我々には難しい

 

特に日本において、高血圧ひいては脳卒中が多い理由としてあげられるのが食塩の摂取量が多いことです。食塩摂取量が多いと、以前ご説明したように(「血圧」と「高血圧症」 〜血圧が上がる (高血圧①))血圧が上昇し、また食塩摂取量を減らすと血圧が低下することが多くの研究で証明されています。2019年の国民健康・栄養調査結果では1人1日あたり男性10.8g、女性9.1gの食塩を摂っているとの結果となりました。これはWHO(世界保健機関)の定める一般成人の食塩摂取量5g/日未満のほぼ倍に相当します。これを踏まえて、ガイドラインでは減塩目標を6g/日未満としています。

 

日本人の食塩摂取量が多いのは、伝統的に汁物や漬物、保存食を好むという傾向に反映されています。御飯のお供が食卓にあると一段、食事が進みますよね。各自治体が健康施策の一環としてなんとか食塩摂取量を減らすための啓蒙活動を行っています。ここに転載するのは京都府の取り組みの一部ですが、皆さんの居住自治体でも類似の取り組みをしているはずですので検索してみてください。

きょうと適塩プロジェクト「あなたがよく食べている料理は?」(PDF)

 

あなたの塩分チェックシート(PDF)

 

まずは一つずつできることから 〜続かなくては意味がない

 

あれもこれも塩分量が多くて嫌になりますが、逆に言えば取り組むきっかけは多いということでもあります。まずは「麺類の汁は残すようにする」「減塩をうたった商品に変えてみる」「毎食の漬物と味噌汁はやめる」など取り組みやすそうなものから始めていくのが良いでしょう。また料理の工夫でも食塩摂取量を減らすことができます。食塩は精製塩ではなく天然塩を使う(ミネラル)、ハーブ野菜や香辛料でパンチをつける、汁物は塩よりも出汁を利かせる、あんかけで舌に味を残すといった料理の工夫は減塩の口寂しさを補ってくれるので、生活習慣改善が継続しやすくなります。無理をして頑張りすぎて続かないのでは意味がありません。なので、一つずつできることを増やしていくのが良いと思います。

 

 

 

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